みなさまごきげんよう。今日は愛用しているサービスTSUTAYADISCAS でレンタルした映画のお話。
成瀬巳喜男監督、高峰秀子さん主演の映画「乱れる」を見たよ。
現在高峰秀子さんの生誕100年プロジェクトが開催中です。
高峰秀子生誕100年プロジェクト
2023年から、高峰秀子生誕100年を記念する大規模なプロジェクトが開催されています。
2024年3月末には東京タワーでの大特別展、その後も都内各地で愛用のきもの展、写真展、上映会や豪華ゲストによるトークショーなどが催され、様々なイベントが続きます。
フランスの映画監督レオス・カラックスは高峰さんの大ファンであり、以下のように述べています。
「僕にとって高峰秀子は、リリアン・ギッシュからジュリエット・ビノシュに至る、全ての銀幕上の女性たちの歴史を思い起こさせるものだ。彼女の顔つきは、小津映画のヒロインたちよりも日本的ではないように思える。奇妙に聞こえるかもしれないが、僕には彼女はフェルメールやダ・ヴィンチ、ラ・トゥール、ボナール、マティス等の画家のためにポーズをとっている姿が思い浮かんでしまうのだ」
高峰秀子生誕100年プロジェクト公式ページより引用
生誕100年となる2024年を機に、高峰秀子さんの俳優としての功績に限らず、人として、女性としての生き方、美学、何を大事にしたのかなどを、今の若い方々にも知ってもらいたいとの想いから、本プロジェクトは企画されました。
高峰秀子生誕100年プロジェクト公式ページより引用
先日、NHKラジオ深夜便の放送で文筆家の斎藤明美さんからこのプログラムのお話を聞き、斎藤さんのピリっと引き締まった、それでいてユーモアのある温かい雰囲気にワクワクしました。高峰さん、高峰さんの夫である松山さんとの貴重なエピソードもたくさん聞くことができました。
(公式サイトで拝見した斎藤さん、高峰さんが「あなた綺麗ね」と仰った通り本当にお綺麗でお洒落な方ですね。)
カラックス監督もこんなにも大ファンだったなんて。世界中にファンがいらっしゃる高峰さん。
「高峰秀子さんの映画、また見たい。」
すぐにTSUTAYADISCASのリストに作品を登録しました。
お家のポストに届きますよ。
「乱れる」監督:成瀬巳喜男
以前見たことがあった作品は「流れる」「浮雲」の二作。いずれも成瀬監督の作品。
どちらも大好きになったので、これからまた少しずつ見ていきたいです。
こんな風に封筒で届きます。見終わったらこの封筒に入れて近所のポストから返却OKです。
昔の映画を見られるの、すごい嬉しい。
サブスクにはあまり古い映画がないもんね。
今回は「乱れる」を。↓※注ここから映画の内容が書いてあります
戦前と戦後、庶民の光と影
(↓ここから映画の内容が書いてありますのでご注意ください)
主人公のレイコ(高峰秀子)は戦時中に19歳でとある酒屋にお嫁にきますが、半年後に夫は戦死、その知らせを受けた日に空襲があり、一家は焼け出されてしまいます。
夫の幼い兄弟たちと姑の面倒を見ながら一人で18年間かけて酒屋を再建し、30代後半になった今では立派に店を切り盛りするレイコ。ただ、大手スーパーが台頭し、個人店では太刀打ちできそうもない厳しい現実の日々。
レイコとは対照的に、戦中はまだ幼く復興後に成長した様々なタイプの「若者たち」の会話が映し出され、その余りのギャップに胸が痛くなります。
たったひと回りしか違わない「若者」たちとの間にあるその10年ほどの経験の差は余りにも激しく、何もかも考え方が違います。この映画の「若者たち」と「今の私たち」の方がまだ似ているのではないだろうか、と思うぐらいに。
「そのころ勤労奉仕に来ていたの。」
「あの人の戦死が分かった日に焼け出されて」
映画「乱れる」より
「私たちがどういう気持ちで生きてきたかなんて、教科書には載ってないもんね。」
映画「乱れる」より
レイコを演じる高峰さんは本当にサラリとした様子でこれらのセリフを言います。
10代の思い出ひとつひとつの恐ろしい重みとこのサラリとした節のアンバランスが、自分にとっては印象深いシーンでした。
まるでどこかに自分自身を置いてきたかのようにサラリと。
他界した祖母と高峰さんはほぼ同じ年齢で、私が分かるはずもない祖母の娘時代にも少し思いを巡らせました。
青年の恋といびつな現実
レイコは同居するひと回り年下の義理の弟(加山雄三)に思いを告げられ、動揺する。
年齢よりも何よりも、あまりにも背負ってきたものが違いすぎます。
一生懸命生きてきても自分がどこにも収まらないいびつさを感じるレイコ。戦争によって力ずくで歪められた「何か」を直すのは不可能で、誰しもそのいびつさの中で必死で生きていくしかありません。
レイコだけではなく、周囲にもその見えないいびつな空間の中で共に生きるしかない人が描かれています。
「普通」と「普通じゃない」はいつだってすぐ隣に一緒に存在しているという悲しさ。
美しい朝に
まさかの結末は美しい朝日の中、予めこうなると決められていたかのようにあまりにも自然にフワリとやってきます。
白黒映画の心地よさ
白黒映画を見ていると、光や水、木、布など自然の素材が本当に美しく見えます。
カラーの映画ももちろん好きですが、白黒映画で見る着物の美しさは見ていてとても心地よくなります。「衣装」ではなく、綿や麻、絹の布本来の「衣服」として周囲のものと調和してとても清々しい。
この映画には様々な状況のコントラストが織り込まれていますが、白黒映画であることがより一層その「光」と「影」を引き立てているような気もします。
最後に
TSUTAYADISCAS は楽しい。
これからも「TSUTAYADISCAS」 を楽しんでいきたい
- リストに見たい作品を登録しておくと送ってきてくれる
- 郵便ポストに返却すればいいので楽ちん
- サブスク配信にはない「ジブリ映画」や「昔の名画」もたくさん。
お家のポストを開けるのがワクワクする